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修復対象は、インド・ラダック地方北部のヌブラ渓谷にあるエンサ寺院にて2020年に発見された仏塔壁画である。向かって正面の壁には説法印を結ぶ如来坐像と両脇に菩薩坐像、右側の壁には蓮台に座す菩薩像が描かれているが、その描写表現は7世紀ごろの古い様式と共通点が見いだされるものである。ラダック地方および周辺一帯では、最古の仏教壁画となり、かつ同地域で仏教が盛んになるのは10世紀ごろとする従来の学説を覆す可能性がある貴重な資料である。 現状、崩れた仏塔の下に位置する壁画に対して暫定的な保全措置が講じられているが十分ではないため、早急に保全環境の改善を行うとともに、壁画の彩色層の材料調査を行い、剥落止めや支持体の補強など応急措置を実施していく予定である。 |