「高野大師行状図画」の修復

 フィラデルフィア美術館は、1877年に設立され、時代、地域、分野において幅広く所蔵していることで知られている米国有数の美術館である。日本、中国など東アジアについては、約9,000点の所蔵品を有している。
 弘法大師空海の一生涯の行動や業績を表現した絵巻の中で、助成対象は、十巻本「高野大師行状図画」系統の転写本で、第一巻相当分である。詞書の書風は室町時代の絵巻に見る正当な流れを汲むものである。また、絵は細部まで丁寧に描かれ、明瞭な彩色が施された上質なものであり、室町末期に遡ることができる貴重な作例である。
 現状、全体に染み、汚れ、虫損が見られ、細かな折れや欠失が多数生じている。また、絵具層も不安定になっており、修復の緊急性が高い。修復は、米国東海岸の日系工房にて行われる予定である。

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