ボストン美術館(アメリカ)所蔵「毘沙門天像」の修復

 ボストン美術館は、浮世絵50,000点超と肉筆日本画4,000点を所有する。日本絵画のコレクションとしては世界第一級の水準を誇る。
 毘沙門天は、四天王の一つである多聞天の別称であり、本作品は、平安時代末期から鎌倉時代前半の作とみなされている。平安時代の仏画に多用される截金や金箔は一切使用されておらず、よどみない滑らかな墨線が印象的な作品である。また、画面向かって左に多聞天の妃にあたるとされる吉祥天、足下に地天など多くの眷属を従える点でも珍しいものである。
 現状は、絵絹のよじれや補絹との接合部の傷み、賦彩の浮きなど劣化が進んでおり、早い時期の修復が必要な状況にある。
 本件は、3年計画の1年目で、技術や材質の調査等に充当され、2年目以降同館内にて本格的な修復作業を行う予定である。また、現在の額装から掛幅装への変更も検討している。

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