ケルン東洋美術館(ドイツ)所蔵「愛染明王像」の修復

 ケルン東洋美術館は、ウィーンの大企業家一族の出である美術品蒐集家アドルフ・フィッシャーにより、東洋芸術のあらゆるジャンルに亘ってその歴史的な展開を一望できるようにした美術館として1909年に設立され、約11,000点を所蔵している。
 修復助成対象の「愛染明王像」 は、鎌倉・南北朝時代の作品で全体に鮮やかな彩色を施し、精緻な蓮台の描画と繊細な筆致を特徴としている。とりわけ裳の部分は、金銀箔を用いた截金(きりかね)で荘厳(しょうごん)されているが、極めて細緻で、同時代の他の仏画の中にあっても遜色のない優れた作品であると言える。
 現状は、特に下地である画絹の傷みが激しく、明治時代後期に絵が切り取られ額装になっていて常に外気に触れる状態で保存上好ましくないため、急いで掛軸装に戻すよう全面的な修復が求められている。修復作業は、日本で行っている。

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