ベトナム国立歴史博物館所蔵 木彫扉の修復

 ベトナム国立歴史博物館は、1910年に設立されたフランス極東学院博物館を母体とする博物館で、全国各地からの出土資料や、阮王朝の遺品をはじめとする膨大なコレクションを有している。
 本「木彫扉」は、北ベトナムのナムディン省の古刹フォーミン寺(普明寺)の本堂正面の中央扉で、13世紀から14世紀にかけて制作されたものとみられる。石造りの多いベトナムでは珍しい木製で、二匹の龍が菩提樹の葉をかたどった枠の中に、立体的に精緻に掘りだされており、美術品としての価値が高く、貴重なものである。
 扉はそれぞれ一枚板から彫り出されていることから、大きな欠損やひび割れなど多数認められる。露出したまま展示されているため埃の付着がひどく、近年の修理で補われた石膏も剥落し、作品の鑑賞を妨げているため、適切な修復が急がれる。修復作業は、日本の修復業者によって行われるが、ベトナム人修理技術者養成も目的としている。

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