本紙 86.6cm×59.0cm

絹本著色 五智(ごち)如来像

  大智寺は、鎌倉時代に泉橋の橋柱をもって文殊菩薩像を刻み、西大寺慈真和尚を開基として創建された橋柱寺を前身とし、寛文9年(1669)本寂和尚によって再興された際に改名されて現在に至っている。   

 本作は、大日如来を中心とする密教の世界観を表す両界曼荼羅のうち、胎蔵界曼荼羅の中台八葉院に配される五仏(五智如来)のみを抽出して構成される大変珍しい別尊曼荼羅(べっそんまんだら:ある一尊を中心として、関係ある諸尊または眷属を配した曼荼羅)である。端正な尊像表現や麻葉繋ぎ紋・雷文繋ぎ紋を多用する截金文様の特徴から、鎌倉時代後期の制作と考えられている。大智寺の前身寺院である橋柱寺の創建後まもなく施入された可能性もあり、南山城地域を代表する中世密教画の優品といえる。

 しかしながら、経年の劣化により画面全体に極めて強い横折れが多数生じており、料絹の断裂や浮き、絵具層の剥離・剥落が進行している箇所も少なくなく、早急な修理が必要な状態にある。本年度より2ヵ年計画で修復を図る。 


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