本紙 210.3cm×282.1cm

 絹本著色 八相涅槃図(はっそうねはんず)及び紙本墨書 涅槃講式(ねはんこうしき)(断簡(だんかん))

  劔神社の創建は古く、奈良時代より祈願の霊場として朝廷をはじめ多くの人々から厚い信仰を受けてきた。織田信長が氏神と崇めて保護したことでも知られる。

 八相涅槃図は、中央に大きく涅槃の情景を、その左右の帯状区画に釈迦の生涯の事績(釈迦八相)を描いたものである。涅槃を中心に釈迦の生涯を一図に視覚化した記念碑的大作として、国の重要文化財に指定されている。制作者は明らかになっていないが、中心に描かれる涅槃図の山岳描写が古様を伝えることから、鎌倉時代に遡る作品であると考えられる。かつて、劔神社境内には真言宗寺院の織田寺が建立されており、本図は織田寺本堂に懸けられていたと考えられる。本図とともに伝来している涅槃講式断簡は、巻子装で5紙からなり、前後は欠いている。室町時代の作と考えられており、本図が涅槃講に用いられていたことを示す資料である。

 本図の画面には経年の劣化による料絹の強い折れや欠失、顔料の剥落等の損傷が著しく極めて危険な状態にある。また、涅槃講式断簡も、本紙料紙の破れや欠損が多く、虫損も見られる状況にある。本年度より5ヵ年計画で修復を図る。


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