男神像
像高 61.6cm

女神像
像高 47.4cm

 木造男女神像4躯

  千足神社は、和銅年間(708〜715)の創建とも伝えられる古社である。 

  その本殿に男神(だんしん)像3躯、女神(じょしん)像1躯が祀られており、いずれもクス材とみらる広葉樹材による一木造で内刳りは施されていない。男神像は巾子冠(こじかんむり)をかぶり袍(ほう:束帯の上着)を着けて、腹前で両手を重ねて笏(しゃく)を執る姿で坐す。女神像は花冠(かかん)を被り、大袖衣(おおそでごろも:礼服の上着)や鰭袖衣(はたそでころも:袖口に布をつけて袖幅を広くした衣)を着けて、宝珠などを捧げ持って坐す。いずれも通例の男女神像の形状となっている。その様式から、平安時代末期から鎌倉時代初期の制作と考えられており、南九州では現存する最古級の神像彫刻である。とくに一部の男神像の像底には「霧嶋」と判読できる銘文があり、霧嶋神像として制作された可能性がある。平安時代の九州における神像制作と当地での展開を跡づけられる実例として貴重な存在といえる。

 現状では、いずれの神像も剥離が継続進行し表面が薄くなり、像底も朽損甚大で不整形になっている。このまま放置すれば剥落がさらに進行して尊容が失われるとみられ、早急な修理が求められる。4ヵ年計画で修復を行っており、本年度は2年目となる。


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