本紙 112.1cm×47.4cm

絹本著色 阿弥陀如来像

 本作は、逆手来迎印(さかてらいごういん)を結ぶ阿弥陀如来を独尊(一体で祀られている仏像)で描いた図である。高麗時代の阿弥陀如来図は、浄土教と阿弥陀信仰が東アジア全域に広がって各地で造像がなされた結果、その図様に独自性が生まれた。本図と同じ姿態の阿弥陀独尊像および阿弥陀三尊像は、高麗時代の朝鮮半島における浄土教信仰の拡がりにともなって多数制作された。

 身体の輪郭線や文様の金泥線などは細く弾力に富み、着衣の朱の色調も明るく、体躯のバランスも良い。従来の説では14世紀半ば以降の作とする見方があるが、柔和な顔貌表現などには、より古様な点もうかがわれる。高麗時代の浄土教信仰と逆手来迎印を結ぶ阿弥陀の様相を知る上で重要な作例であり、また高麗仏画の優品として貴重である。

 しかしながら、経年による汚れの付着、白カビや黒カビ痕がみられるほか、本紙全体に折れ、折れによる擦れが生じており、保存修復の緊急性が認められる。2ヵ年計画の修復は、本年度で完了する。 


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