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 323.5cm×258.5cm

 アエネアス物語図毛綴壁掛(ものがたりずけつづれかべかけ)

  本作は、16世紀半ばに高級タペストリーの産地として名高いブリュッセルで製作されたタペストリーである。トロイヤ戦争物語の一場面で、トロイの戦士アエネアスがカルタゴの女王ディドに出会う場面を多色の毛と絹で織り出している。欧米においても、現存する同時代・同産地の高級タペストリーが少ないことに加え、江戸時代に日本に渡って以来前田家で秘蔵され、欧州とは異なる仕様や保管方法で伝えられたことで、極めて色鮮やかな状態を保っており、世界的にもたいへん貴重な作品と評価できる。
   しかしながら、500年の時を経て堆積した埃、毛織物特有の虫害、繊維の劣化による欠損が目立ちはじめたことは否めず、物理的な損傷を避けるため一般の目に触れる機会があまりなかった。この世界的にも貴重なタペストリーを日本において良好な状態で継承するとともに、公開の機会を増やすため、4ヵ年計画で修復を行っており、本年度は3年目となる。


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