像高 103.0cm

木造阿弥陀如来坐像(あみだにょらいざぞう)

  本像は、像内背部の墨書により大治(だいじ)5年(1130)の制作であることが明らかになっており、平安時代後期の彫刻の基準作例としてきわめて重要な仏像といえる。河内国井深の西恩寺(地名・寺名とも詳細不明)に安置されていたという伝を持つが、昭和になって、住友家によって購入され、その後泉屋博古館に寄贈された。

 檜材の寄木造で、膝前あたりにわずかに当初のものと考えられる彩色層を残している。螺髪(らほつ:如来像の頭髪)は切付(きりつけ:彫り出す代わりに線を刻んで表現する技法)で、後補の彩色層が残る。その作風は平安時代後期に広まりをみせたいわゆる定朝様(じょうちょうよう:平安時代の仏師定朝にはじまる和風の仏像彫刻様式)を基調としながらも、自由な衣文構成や頭体幹部を一材より彫出する古様な構造に個性が認められる。また、像内銘には女性の名が多く記されるなど、当該期における在地の豪族層による造像の実態を知る上でも見逃せない作品といえる。

 現状では螺髪に施された後補の彩色の浮き上がりが目立ち、背板の縁や背板に隣接する部分を中心に虫蝕(ちゅうしょく)による木部の朽損が認められ、さらには虫蝕箇所等の補修のために後世使用された充填剤が劣化し、欠損部が露出するなど危険な状態にある。彫刻面に経年劣化が激しい箇所もあり、全面的な修復が必要となっている。


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