地蔵菩薩                   秦広王
 本紙 76.9cm×40.6cm           本紙 89.3cm×37.6cm

 本著色 地蔵十王図( じぞうじゅうおうず)

  来迎寺は、奈良時代行基が開いたと伝えられる。法然上人の門弟らの大和東部における信仰拠点であり、多田満仲(ただのみつなか)の後裔で中世に勢力を誇った多田氏が本堂を建立し代々帰依した、歴史的に重要な古刹である。

  本図は、室町時代の掛幅画で、地蔵の1幅と、当初10幅あったと推定される十王の3幅が存する。宋元時代の地蔵十王図の表現技法に倣って丹念に描かれており、図様に珍しい特徴があり注目される。図像的にも、地蔵が踏み下げる足が左足でなく右足であるのは珍しく、十王の一体が笏を机に開いた巻子上に立てて持つのも他に例をみない。このように類例稀な特徴を持ち、地蔵十王図の遺品として絵画史上価値が高い。

  しかしながら、現状は、本紙・表具とも経年による傷みが甚大である。本紙の料絹が随所で欠損するほか、糊離れを起こして肌裏紙から浮き上がり、料絹と彩色の剥落が進行しており、深刻な状態にある。3ヵ年計画で修復を行っており、本年度は2年目となる。


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