像高 115.0cm

木造阿弥陀如来坐像(あみだにょらいざぞう)

  大日寺は、鳥取県を代表する霊域である大山の裾野丘陵の奥部に位置し、大山寺や三佛寺と並ぶ天台宗の古刹である。寺伝によると承和8年(841)慈覚大師円仁の創建とも、永延2年(988)源信の創建とも伝えられ、平安時代には、上院・中院・安養院の三院から成り、寺坊三百余りを有していたという。 

 本像は、像内に嘉禄2年(1226)の墨書があり、制作時期は鎌倉時代と推定されている。目鼻立の小さな面貌表現や造形全体に平安時代後期風の端正さが残されている一方で、上体などには抑揚のある肉身表現が認められ、両足部には明瞭な衣文線が刻まれるなど、鎌倉彫刻としての表現もみられる。大日寺を含む周辺地域の歴史を考える上でも、また鎌倉時代における彫刻の様式を考える上でも貴重な作例といえる。

 昭和7年(1932)に修理が行われているが、経年の塵埃による汚損・虫蝕・古色箇所の変色・カビなどが生じている。また、躰部後面背板材の矧ぎ目に亀裂が生じ、像内の矧ぎ目に打たれた後補の鉄鎹(てつかすがい)が錆びて腐食している。後補材についても乱雑に打ち付けられている状況が見られ、早急な燻蒸、解体修理が望まれる。


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