像高 102.0cm

 木造十一面観音菩薩立像( じゅういちめんかんのんぼさつりゅうぞう)

 鳳生寺は、行基(668〜749)が熊野遊化の際に釈迦牟尼佛を刻んで御本尊となし、瑞雲山鳳生寺と号したことを縁起とする臨済宗の寺院である。
 四角張った輪郭の頭部、ウエストをしぼった体躯、一部に渦文風の衣文線を配する点に、平安時代中期の早い頃、10世紀彫刻の名残が示されるが、肉身部の抑揚が控えめで衣文線も浅く刻むなど、次代に続く新様も表れる。こうした造形から11世紀初頭頃の造像と推定される。
 和歌山県中部地方の平安時代中期〜後期の標準的作例としての重要性とともに、近隣にある道成寺文化圏における造像環境を捉える上で貴重な情報を有している。
 現在、全面的に虫食いがあり、特に右肩・腕部・左上腕部で著しく朽損が進んでいる。右腕部は平成29年度和歌山県立博物館特別展「道成寺と日高川」の展示のために応急の接着措置がなされているが、構造的な朽損状況はなお深刻である。また、後補彩色の剥落も進んでおり、当初の彫刻面が明らかではないという問題がある。保存状況の安定と当初の像容の解明のためにも、早急の修理を必要とする。


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