各 260.0cm×180.0cm

 木島櫻谷作(このしまおうこくさく)「かりくら」

 木島櫻谷(1877〜1938)は京都生まれの日本画家。徹底した写生を行い、透徹した自然観照と叙情あふれる画風で明治後半から昭和初期にかけて活躍した。その画風は京都画壇に伝統的な運筆法を駆使しながら、明治末期からは油絵の技法をも研究した鮮麗な色彩と造形で新境地を開いた。大正末期頃からは南画風の表現に傾き、写実みと瀟洒で詩情豊かな画風へと展開していった。
 「かりくら」は第4回文展で3等を受けた作。題名は狩猟場、あるいは狩りの競争を指す。高さ2.6mという巨大画面に、疾走する3人の狩人が描かれる。その表情もさることながら、写実的で躍動感のある馬の表現に動物画を得意とした櫻谷の真骨頂をみることができる。なお、本作は、櫻谷最大級の作品ながら、長年所在不明であった。
 現状は出品後に表装を解かれ、裏打ちすらない状態である。長年巻かれた状態で露出していたため、折れ、虫損、汚れなどが目立ち、白、緑、黄色などの顔料を中心に、剥落や亀裂が広がりつつある。保管箱もなく出し入れすら危険で、さらに劣化が進む恐れがある。2ヵ年計画の修復は、本年度で完了する。


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