本紙 113.3cm×58.0cm

 麻本著色 釈迦三尊像(しゃかさんぞんぞう)

 長崎県平戸市にある雄香寺(ゆうこうじ)は、平戸松浦家の菩提寺である。釈迦三尊を描いたこの画像は、丈低く髪際が弧を連ねたような釈迦の頭部、鋭く尖った爪、普賢・文殊が袈裟を着用、台座から逆三角形を呈して垂れ下がる着衣の先、総体に赤を多用した色調などから、中国の南宋〜元時代の仏画を彷彿とさせる図像と画風を示している。しかしながら、形状の的確さを欠き、描線は張りと筆勢が弱く文様表現も簡略なため、中国絵画を元に、日本で描かれた可能性が高い。
 このような中国画を写した仏画は少なくないが、本図は日本仏画風の改変が少なく、原画をかなり忠実に写そうとした点で注目すべき作例といえる。また、麻本に描かれていることから、大陸や朝鮮半島との交流が盛んであった平戸の地に伝来するものとしても注目に値する。現状は、本紙の折れによる絵具の剥落が進行しており、早急な修復が必要となっている。修復は、2ヵ年計画で本年度から開始する。


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