本紙 100.5cm×28.4cm

希因筆(きいんひつ )「名月(めいげつ )」自画賛( じがさん)

 希因(?〜1750)は加賀金沢の薬店綿屋に生まれ、分家して酒造業等を営んだ。10代の頃に蕉門の北枝に俳諧の手ほどきを受け支考、伊勢派の乙由に師事し、のち伊勢派の一方の雄として北陸俳壇に重きをなした。
 「名月」は俳画をよくした希因の自画賛の中でも殊に評判の高い逸品で、上辺に満月の半分をのぞかせ、下辺に細線で風にそよぐ花薄を描き余白を存分にとって良夜の清光をあまねく照り渡らせた鮮やかな手際で、鷹揚で上品な加賀俳壇の気風をよく表している。句意も、平俗をもって地方俳壇に進出した伊勢派らしい作風で、希因の代表作の一つである。
 本紙画面には多くの横折れがあり、横折れ部分を中心に磨滅を生じている。本紙、表装裂の劣化も進行しており、料紙の欠失もあるため早急な修理が必要となっている。


Copyright (C) The Sumitomo Foundation. All Rights Reserved.

前ページに戻る