本紙 147.0cm×80.3cm

絹本著色 焔口餓鬼図(えんくがきず) 

 六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)の開基は、奈良の大安寺の住持で弘法大師の師にあたる慶俊僧都(きょうしゅんそうず)で、平安前期の延暦年間(782〜806)の開創といわれている。当時は真言宗で、平安・鎌倉期には東寺を本寺として多くの寺領と伽藍を有していたが、中世の兵乱に巻き込まれ荒廃。南北朝期の貞治3年(1364)建仁寺の住持であった聞溪良聰(もんけいりょうそう)により再興・改宗され、臨済宗建仁寺派となった。

 焔口餓鬼とは、面燃餓鬼、面燃大士とも称される中国の道教の神であり、同時に仏教における観音菩薩の化身とされる、仏道習合の尊格である。焔口餓鬼図は我が国に3件しか現存せず、画面左隅の題記から制作年、制作者が判明する唯一の例である。

 本紙料絹の折れ、摩耗、亀裂が多く、剥落が進行している。絵具層にも亀裂、欠損、粉状化があり、過去の不適切な応急修理も見られる。


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