「松に月図」

 狩野山雪筆(かのうさんせつひつ) 桂春院方丈障壁画(けいしゅんいんほうじょうしょうへきが)

 妙心寺の塔頭桂春院方丈には4室にわたって障壁画が残されている。障壁画の制作時期は桂春院方丈再建の寛永8年(1631)と同時期と考えられ、また作者は、桂春院5代目住職実鑑守貞(1691〜1747)が寛保2年(1742)に記した『桂春院建立以来歴年事実覚書』と画風から、狩野山雪とされている。
 狩野山雪は狩野永徳の高弟として知られる狩野山楽の婿養子であり、この家系が京都に残り「京狩野」と称され幕末まで続いた。養父山楽の気宇壮大な画面と異なり、山雪は幾何学的な構図を好み、奇矯な造形感覚を示した。
 今年度修復を図る「松に月図」は、老松を襖4面に描く大作で元々仏壇の間の障壁画であったが、現在は室中正面にはめられており、絵具層の剥落、汚れ、破損などがあり、損傷が進んでいる。
 9年を要する修復事業は3期に分割して実施し、今年度は第1期の初年度となる。


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